学生は早い時間から飲みたいと提案し,17時開始になったことを意外に思うと同時に,私は嬉しく思った。私は,飲むなら早い時間から飲みたい。私の経験的確信としては,各種会合は19時開始が基本である。私は早寝早起きのライフスタイルであり,人よりも朝食,昼食および夕食の時間が早い。お酒を飲む場合は,夕食の前に飲むので,もともと早い夕食よりさらに早い時間に飲んでいる。会合が19時開始の場合,私は空腹著しく,飲むよりも血糖値をいかにマネジメントするかがポイントとなり,お酒を満身楽しめない。スピーチなどがアタッチしている場合,内容理解に結構な認知的努力を要する時もある。対策オプションとして,ランチを普段より多めに食べるか,午後のおやつにサムシングを摂取するオプションが浮かび上がるが,それらのオプション選択は本望ではない。それが今回,17時開始という提案を受けた。学生からそのような提案が出たのは意外だった。学生は,「だって,淡野先生,3時間飲んだとしても,まだ20時ですよ。遊びまくれますよ。」と言っていた。私は大きく同意した。尚,私の本望を書けば,私は,本気で飲むならお昼から飲みたい。正午前後にヌルッと飲み始め,飲んで食べて,時に寝て,ワイワイと楽しみたい。10時間飲んでもまだ日付はその日のままである。心地良く酔って,酔いが覚めても,また飲んで心地良く酔える時間的余裕がある。途中で寝ても,起きて遊ぶことができる。まあ,学生は開始時間くらいまで寝ていることも珍しくないから,学生との飲み会ではこのパターンは実現しないだろう。
大学のバス停で松江駅に向かうバスを待っている間,学生が高速バスに乗り遅れたエピソードを開示した。休日の松江市街は,松江城国宝指定の影響で道路が混み合うことが珍しくない。秋となり,公道を抱いたイヴェントも開催されているので,バスの定時運行は幾分難しくなっている状況にある。学生は,「路線バスが遅れて高速バスに乗れなかったことがあります。」と言った。他の学生も,「自分もあります。」と言った。へえ,そういうこともあるんだな。私はパンクチュアルを自負している。路線バスで松江駅に向かう際は,松江駅から乗るJRや高速バスや空港バスとの乗り継ぎに余裕を持たせている。例えば,乗り継ぎの時間として20分から30分は取る。乗り遅れることと比較すれば,定時で着いて20分から30分待つことは何でもないようなことである。予定の特急やくもに乗れずに,次のやくもを待つのは苦痛である。後悔に苛まれるだろうから,ストレスも上がる。空港バスの場合は,乗り遅れればフライトにも乗り遅れることになる。1日1便しかないフライトであれば,絶望的である。松江駅のお土産を鑑賞したり,最新観光情報にキャッチアップしている間に時間は過ぎるので,私は余裕を持って行動する。
串カツ屋大阪新世界山ちゃん松江駅前店で飲んで食べて,自由な発想で飲んで食べることを再認識した。飲み放題をオーダーし,飲みたいものを飲んだ。そして,食べたいものを食べた。いきなりラーメンを食べる学生もいた。私には,学生の飲み方食べ方にとやかく言う筋合いはないので,「飲み会でいきなり麺もの・ご飯ものは邪道だ。」とか「串カツ屋に来てラーメン?」といったツッコミはしない。只,マッチするかどうかは知りたいので,「いきなりラーメンを食べて,マッチするん?」と尋ねた。アンサーは,「お腹が減っているとすごく酔うので,最初に食べておきたいんです。」というものだった。ほう。ここで,私は,自由な発想で飲んで食べることを再認識した。学生の飲み方食べ方は,31歳の私が何年も前にやめてしまったものである。ご飯ものや麺ものを締めに食べるなんて,誰が決めたのか,欲したものを美味しく食べられればそれでいいではないか,と私は感心した。心理学には,確証バイアス(confirmation bias)という概念がある。確証バイアスとは,あるテーマを評価検証する際,テーマを支持するものを選択的に取り上げる人間の行動傾向である。お酒を飲む経験を積むうちに,ご飯ものや麺ものを締めに食べるという方法が理に適っていると言われることを知る。自分もやってみるようになる。消化吸収にいいなあと思うようになる。巷間言われている飲み方食べ方は正しいな,と思うようになる。心理学は,この一連の行動に対して,確証バイアスという考え方で異論を投じる。あなたの認識は,当該テーマを支持する知見ばかり集めてはいませんか,という異論である。因みに,私は,飲んでいる時はお腹がチャポチャポになるのであまり食べ物を食べない。アルコール飲料は,そのほとんどの吸収が腸で行われる水とは異なり,胃においても吸収されることが明らかになっている。そのため,水と比較して,たくさんの量が飲める,また,食べ物を食べながら飲めると言われている。私は,この知見を了解している。しかし,お腹弱い系大学教員なので,お酒と食べ物を進んで同時には摂取しない。コース料理の場合,可能な限り自分が食べたいものをキープしておくか,可能な場合は飲み会後半で別でオーダーして食べる。また,ご飯ものや麺ものは,巷間広く採用されている手順と同様,締めに食べる。この日は,記憶している限りでは淡淡とビールを5杯のみ,最終盤で串カツと串天ぷらをサクサクと10本食べた。
「淡野先生,何か話をしてください。」と謎のリクエストを受け,私から時計回りで話をすることになったので,私は,特別オチがある話ではない,とイクスキューズを入れてから,週末の度にランチのために足繁く通っている魚の定食をサーヴする日本いちというお店での出来事を話した。私は,ランチに付いてくるドリンクは,いつも決まってオレンジジュースを選択し,サーヴの方法として氷抜きをオーダーし,サーヴのタイミングとして食前をオーダーする。食べに行く時間も,座るカウンター席の場所も,特別なことがない限り毎回決まっている。松江に来てから1年半が経った。私のビヘイヴィアがスタッフさんに認知されるようになったらしく,ドリンクをオーダーする時には,私が言うより先に「氷抜きですね?」と言われるようになった。この日も,ランチを日本いちで食べ,オーダーの際にドリンクは氷抜きとすることを先んじて確認されたので,私はこの件を話した。特に盛り上がるとは思わなかったが,飲食店でアルバイトをしている学生がいたので,「私のアルバイト先のカフェでもそういうことはありますよ。常連のおじさんがいて,コーヒーには蓋は付けない,ポイントシールは貯めていないので渡さない,という決まりがあります。でも,最近おじさんがポイントシールを集めるようになったので,ポイントシールを贈呈することを忘れないよう留意する,との連絡がスタッフの間で回りました。」と応えたり,「私のアルバイト先のラーメン屋にも,毎回同じメニュを食べるお客さんがいますよ。来店されたら,何も確認せずにオーダーを通しますよ。」と応えたりした。私は,どちらかと言えば,常連客と認知されたくない。厳密に言えば,常連客と認知されても良いし,スタッフ間であれこれと言われていても何を言われているかなんて私にはどうしようもないのでそれはそれで良いが,私はあなたのことを知っていますと明瞭に開示するようなビヘイヴィアは抑制して欲しいと思う。同様のことは,以前のブログ「Spin-off from Look」にも書いた。
トークのハイライトは,学生の自転車トークだった。順番で私の次に話した学生は,自転車で松江からイオンモール日吉津に出掛けた逸話を開示した。イオンモール日吉津とは,鳥取県西伯郡日吉津村にあるイオンモールである。日吉津は,米子市に囲まれた土地であり,イオンモールととある企業の工場のためにあるような土地である。松江からは,通る道に依存するが,道のりは約40km,車で走っても1時間ほどかかるところにある。ショップや映画館があり,歌手や著名人がイヴェントなどで山陰を訪れる際には,イヴェントの場所として候補地に上がるスポットである。松江から鳥取に向かう時,軽自動車のCMで「ベタ踏み坂」として有名になった江島大橋を通るルートがある。江島大橋の勾配は,島根県側が6.1%,鳥取県側が5.1%という急勾配である。もしやと思い確認すると,学生はこの「ベタ踏み坂」である江島大橋を通って日吉津に向かったと言う。学生の自転車は,ロードバイクではなく,オーディナリなママチャリである。学生は,ママチャリで,途中自転車から降りることなく,橋を渡り切ったと言う。大変よろしい。これぞまさしく,激チャリである。私は,許可をもらって,学生の大腿四頭筋や下腿三頭筋を触らせてもらった。張りの良い筋肉だった。学生のジェンダーやセックスについて,私は個人的に学生が男だからどうとか女だからどうということを特段言わなくなって久しく,同性でもセクハラはセクハラであることや,異性でもセクハラになりにくいこともあることを了解しているが,それでも,こういう時,学生が同性であると,触らせてもらおうという気になりやすい。何のために自転車で日吉津まで行ったのかを問うと,特に理由はないとのことだった。理由がなくても何かをすることはある。先日は,とある専攻の学生が,「淡野先生,教育実習が終わって,車で琵琶湖まで行って,タバコを吸って帰ってきました。」というその情報だけではかなり謎めいた報告をしてくれた。
ローテイションで次の学生が話をしたのは,実習先における幼児とのやりとりだった。学生は,実習先で,「先生のおっぱいは,蛹なの?」と訊かれたらしい。これだけでは意味が分からないので話を聞いていると,幼児は,胸の成長過程を虫で例え,自分の胸は幼虫で,母親の胸は成虫で,教育実習生である学生の胸は蛹である,と認識したらしい。幼児の世界認識は面白い。幼児心理学を専門とする研究者の中には,幼児の世界認識を科学的に掌握したいと考えて研究を展開する人がいる。
恋人が写真に写る時に大概変顔をするのは照れているからだと思う,と提示した学生に対して,他の学生が,写真写りが良くないことを自覚して斜に構えているのかもね,と応えていた。照れたり嫌に思ったりすれば,正面を外すことはあるだろう。まあ,そういうところも愛していけばいいじゃないか。
「うーん,何もないなあ。」と言った学生がいたので,私が「いいんだ,何も話さなくて。何もないなら,君は何も話さなくていいんだ。誰だ,時計回りで順番に話すと決めたのは。」という何だかよく分からない慈悲を外在化させるケースもあった。私は研究室の会合を強制で実施することはしない。また,学生から自発的に飲み会をしたいとオーダーがあった時でも,その会合の中で「◯◯縛り」と言われるようなコードを作ってそれに合わせて行動調整を強いることはしない。それは,学生の不平不満としてよく聞かれる案件のひとつに,研究室行事への強制参加があり,私はその件を知っている以上,何か強いることはやるまいと考えているからである。大学では,研究室配属が決まった後は,研究室が基本ユニットとなって修学が進む。研究室構成員の関係性向上は重要であるが,親睦を深めることや何かを共に行うことは十分条件であり,必要条件ではない。つまり,強制されるものではない。嫌な人は,従事しなくて良いのである。因みに,上述のやり取りは,普段は気さくに話をする学生に順番が回って来たが,たまたま話題が思いつかなかったために「うーん,何もないなあ。」と発言するに至ったというコンテクストを参加メンバー全員が共有しており,かつ,関係性から過剰厚遇がハラスメントではなく笑いに繋がることが了解できていることを踏まえて行った経緯があることを申し添えておく。
その他たくさんの話があったが,心地良く酔った私は話を聞いていなかったのか,海馬が情報価が高くないと判断したために再生できるものとして記憶していないのか,理由は分からないが,それ以降の話に関する私の認識は曖昧である。再生(recall)はできないが再認(recognition)はできるかもしれないので,そこまでするかどうかは別として,学生と何を話したかを照合すれば分かるかもしれない。楽しかったことは確かである。
コーヒーを飲みながら夜の松江を楽しく歩いた。私は,夜中出歩くことは滅多にないので,たまに飲み会などの際に松江の街を歩くと,新鮮で楽しい。松江には,宍道湖から流れ出る川である大橋川に架かる橋として,宍道湖寄りの西側から,宍道湖大橋,大橋,新大橋,くにびき大橋,縁結び大橋がある。宍道湖大橋,大橋,新大橋,くにびき大橋の4つはそれぞれ近接していて,松江しんじ湖温泉の旅館や企業看板のネオンが光り,趣があると私は思う。くにびき大橋は,橋の側面に,航路標識として赤と緑の灯標が設置されている。私は,欄干から灯標を覗き込んだ。そして,酔いの影響で内言(inner speech)が流出して,「赤色だから右舷標識だなあ,緑色だから左舷標識だなあ。並んでいるから気をつけないといけないあなあ。」とひとりでつぶやいていた。すると,学生が心配して,「淡野先生,何を言ってるんですか。先生の身長だと橋から落ちますよ。」とたしなめてくれた。確かに私は酔ってはいたが,酔って変なことを言っていたわけではない。安心してください。私は,二級小型船舶操縦士免許を取得している。すなわち,小さな船なら運転できるのである。航路標識や係留や乗員落水時の人命救助に関する一連の知識を内面化している。
カラオケでは,学生の歌の上手さとコピー能力に感心した。今回のメンバーには,バンドのヴォーカルをしている学生がいた。発声もヴィブラート(vibrato)も一線を画す趣で歌がとても上手かった。オーディナリなカラオケしか経験してこなかった私は,声量はあるが荒削りな歌や,歌手の歌い方そのままに歌う歌はたくさん聴いてきた。私自身もわずかにバンドを組んだことがあるので,歌に一家言あるヴォーカルと交流もしたことがある。しかし,今回はその上手さに驚いた。また,SEKAI NO OWARIを数曲歌った学生がいた。よく聴くと,マイクパフォーマンスをしている。そして,それは,「SEKAI NO OWARI日産スタジアムライブ2015」のコピーだった。今年,学生はライヴに行ったらしい。そして,カラオケで,そのライヴを再現してくれた。秀逸なコピーで面白かった。私は思い出した。研究室のBlu-rayに「SEKAI NO OWARI日産スタジアムライブ2015」が録画されていた。私は,研究室では,「心理学」や「絵本」や「シドニー」というキーワード録画を行っている。そして,たまに,何故か分からないが,関連するとレコーダーが認識した,思ってもみないような番組が録画されていることがある。今回,そのひとつが「SEKAI NO OWARI日産スタジアムライブ2015」だった。他にあったことは,私は西野カナの楽曲を何曲か歌ったが,数音上げて1オクターヴ(octave)下げて歌う方法はまだまだ練習が必要だと思っていると,学生のひとりが西野カナ好きで何曲か歌っていたので,私はMVに合わせて踊っていたら楽しかった,といったことである。西野カナの楽曲は,MVも秀逸なので,歌っても踊っても楽しいのである。
日付が変わる頃,「SEKAI NO OWARI日産スタジアムライブ2015」が観たくなり,カラオケで歌いたいだけ歌ってからでは眠くなると予測できたので,私はひとりだけ先にカラオケを出て,研究室でBlu-rayを観ることにした。研究室に向かう道中の大学前のコンビニで,授業で交流した学生に出会った。15人ほどのグループで円陣を組んでいた。学生だけのグループではないようだった。また,皆登山ルックだった。学生に声を掛けると,「あ,淡野先生。こんばんは。今から山に登ってきます。」と言った。深夜スタートの登山とはどんなものだろうか。詳細を知りたかったが,円陣真っ盛りで邪魔をしてはいけないことに加えて,酔って認知機能低下(cognitive impairment)が生起していたので,「詳細はまあいいか。」という気になり,そのまま研究室に向かった。
研究室でライヴを観始めたが,眠くなったので,ライヴ視聴は次回の飲み会ですることにした。カラオケを継続した学生たちは,各各解散し,そのうちふたりが「自分たちも観たいです。」と言って研究室にやって来た。私たち3人は,ライヴに行った学生の解説付きで録画を視聴することにした。「この辺りの客席にいました,SEKAI NO OWARIは写真撮影可能なので写真もありますよ,ほらこれです。」と学生が提示し,「おお,すごいな。」と言ってワクワクしながら観ていた。只,眠くなったので,「次回にしよう。」と言って,私は会を閉じた。
振り返ると,とても楽しかった。今回は,LOHAS(lifestyles of health and sustainability)の観点から,学生にも会費を負担してもらった。資源は有限だ,回数と人数が増えると,私だけでは支えられない。飲み会や食事会などの会合をサステイナブルなものにするためには,メンバーにある程度の負担をお願いすることになる。大学院生も来ると思ったが,この日は来ていなかった。後日確認したら,誰からも連絡が来なかったから参加しようがなかったらしい。おお,すまない。次は行きましょう。